>>MUSE VOISE 《3》<<

 

 

そんな中、夏基はどっからか仕入れたのかそんな信憑性のないことを言ってきた。

「仲良くできるといいよね。」

社交的な性格の夏基らしい一言。

「そうだね。男の子かな?女の子かな?」

そう答える僕は、早くも夏基の荒い性格を体で感じ取っていたんだろう。

22なって夏基の彼氏となった今、とても役にたっている。

どっちでもいいような質問には、頷いておくのが身のため世のため人の為ってね。

「楽器は何だろうね?」

ホープがそんなことを発言すると同時に、弘志が戻ってきた。

「ひろし、新しい子が来るって本当なの?」

弘志の姿が見えるなり、カズが尋ねた。

「・・・・。どこから、聞いたのかなぁ。」

首をかしげた弘志は、白髪混じりの髪の毛を撫でながら呟いた。

おそらく、大人の会話を聞いたであろう夏基が気まずそうに俯いた。

「うん。確かに、新しい子を入れたいんだ。だけどね、その子が今日ここに来るとはかぎらないんだよ」

夏基の行動を気にするでもなく、弘志は言った。

「かぎらないって?」

何事にも論理的なホープが聞く。

「うん?私と、音楽がやりたければおいでって言ってあるんだ。だから、その子次第。」

そう言って、弘志は笑った。
僕は、客席ばかりが気になり始めていた。



パチパチパチッーーーーーー

会場中に拍手が響いた。

無事に、プログラムもおわりアンコールに差し掛かって、舞台袖からもう一度ライトの元へと向かう。

最後にきた指揮者の弘志が、なぜかタクトではなくマイクを持った。

「よく来たね。明、待ってたよ」

そんな気さくな声が、会場中に響いた。

4人で弘志を凝視してしまった。そして次の瞬間には、弘志の視線を追っていた。

多くの人が着席している会場で、一人の人間を見つけ出すのは至難の業だ。

僕たちが、あっけに取られている間に弘志は壇上を下りていた。

そして、一人の少年の前に手を差し伸べた。

「さぁ、明。聴いていたんだろう?君も舞台へおいで。」

さも、それが当然のように明(あきら)と呼ばれる子を連れてきてしまった。

明は緊張しているのが、はっきりと分かるほどに顔が強張っていた。

後に、明に聞いたら、何が起こっていたのか訳がわからなくてパニクッてたらしい。

「さて、アンコールをしようか?」

こっちもパニックだって言うのに、弘志はあたりまえのように言った。

明はどうやら、エレクトーンの奏者らしい。知らない間に、エレクトーンが現れていた。

「"家路"弾けるよね。いつも通りにやってごらん」

半ば強引に、いすに座らせた弘志がそう明にいった。

否応なしに、彼から離れて今度こそタクトを持った。

明のことが気になりながらも、僕らはアンコールに集中した。

僕らのハーモニーを崩さないか、気になったけど、どうやら心配はなさそうだ。

なんて、安心するのはまだ早かった。

なにをしでかすか分からない僕らの先生は、また行動を起こした。

一区切りついたところで、僕らに『そのまま』って目で合図して明の所に行ってしまった。

弾きつづける僕らの前に、明が立った。

そして、次の瞬間――

――遠き山に 日は落ちて 星は空を散りばめん――

歌いだした!?日本語の歌詞がこの曲にあったなんって!?

そう、僕らは"ドヴォルザーク 新世界より第2楽章"って習った。

でも、明は日本語の"家路"で習っていたんだ。

明の声は、変声期前の透き通ったボーイ・ソプラノだった。

だたし、音程は合っていても声は震えてるし、僕らから言わせれば発表できるモノじゃない。

これを、聴いて後の明の声を想像できた弘志はやっぱり凄い人だ。

そして、舞台のスポットライトは無事におちた・・・・・・。



舞台袖で、弘志は質問攻めだった。

どうやら、明を舞台に上げてしまったかららしいが、飄々としている。

むしろ、困っているのは明という子のほうだった。

ようやく落ち着いて、僕らは控え室に入った。

全員が着席するのを見ると、明を傍らに弘志が口を開いた。

「びっくりさせてしまったね。この子は、流 明くん(ながれ あきら)。夏基と同じ5さいだよ。エレクトーンを弾いているが、声楽のほうもやらせてあげたい。」

僕らの視線が痛いのか、明は一歩引き気味だ。

明は、見るからに完全な日本人で、真っ黒な髪と瞳が印象的だった。

一重の瞳のせいか、目つきがきつく見えて、子供だった僕らは彼にいい感情を抱いてはいなかった。

しかも、僕らはこの日のために、いっぱい練習してきたのに、一番良いところを明に持っていかれた感じが否めなかった。

あまり歓迎ムードではなかったし、見るからに外人なやつが2人いる。

挨拶をする明の声は小さかった。

「初めまして。明です」

自己主張のしっかりとした僕らの中で、やって行けるのかどうか思わず心配になるくらい。

この・・・・この明が後に、みんなを怒鳴り飛ばすほどになるなんて誰も予想できなかったんじゃないだろうか・・・・・・。

そして、僕らが彼の声の下での演奏じゃなきゃヤダ!と思うぐらいになるなんて。

気づいていたとしても、弘志ぐらいか。

そして、男同士なんて禁忌も回し蹴りできるほどの、一生物の恋がまっているなんてね。

その道のりは、15年経った今でも続いているんだけど・・・・・。



「でも、今の明を見たら、想像つかないよね〜。ホント。」

「そう?僕は、あのときの明もまだ居る気がするけどね」

思い出に浸りながら呟くと、ベッドの中で茶色い瞳が恨めしそうに僕を見ていた。

「・・・・?何?」

「やっぱり、明の方がいいんだ?もう、20年近い付き合いの俺よりも?ふ〜〜ん。」

「え!?」

そう言って、背中を向けられてしまった。

どうして、そういう事になるんだよ!?ったくもう!

「なつき〜〜〜。明を心配してるのはお前も一緒だろ?それに・・・・・」

背中から抱きしめて、言葉を切る。

夏基の体が微妙に強張るのが、分かる。

僕はくすっと口元だけで笑って、続けた。

「こんな風に、ベッドに入りたいって思うのも、夏基だけだよ・・・」

とたんに真っ赤になる夏基が可愛い。

なんて言ったら、半殺しにあうな・・・・。きっと。

普段は、気が強いくせに二人になってこんな風になるとしおらしくなる。

・・・・・あれだけ、やったのにまた欲しくなってしまった。

愛は強し?無限大??

「もう一回、付き合ってよ。夏基・・・・」

そう言うと、くるりと体勢を変えて見つめて来た。

「はっ・・・・・ふっ・・・」

深く口付けていくと、夏基の甘い吐息が聞こえてくる・・・・。

「ねぇ、カズと明も俺たちみたいになれるといいね・・・・」

「前途多難そうだけどね?」

そうやって、僕らの夜は深くなっていく・・・・・。

そして、心の片隅であの二人の行く末を心配していたりする。

明が5歳のあの時から、いったい何があったのかはまた次の機会にでも。

とりあえずは、夏基に集中したい。

健康な22歳としてはね・・・・・・。

 

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